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コラム

自分で行う場合の相続放棄手続きの注意点を解説します

24.01.09
自分で行う場合の相続放棄手続きの注意点を解説します

遺産相続はプラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続してしまいます。マイナスの財産の方がプラスの財産より多い場合やマイナスの財産は相続したくないのであれば、相続放棄の手続きをする必要があります。

その相続放棄ですが、相続放棄は自分で行うことも可能です。相続放棄の手続きには期限があり、家庭裁判所に書類を受理してもらう必要がありますので全体の流れや手順、費用や必要資料を把握しておくといいでしょう。

■相続放棄の流れ

1.相続放棄が必要か検討する
  ↓
2.費用を確認し、用意する
  ↓
3.必要書類を用意する
  ↓ 
4.家庭裁判所に申述する
  ↓
5.照会書に返送する
  ↓
6.相続放棄申述受理書が届く

1.相続放棄が必要か検討する

相続放棄をすると撤回ができません。財産調査を行い、預貯金などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産がどれくらいあるかが調査した上で、相続放棄をするべきかどうか慎重に検討しましょう。

■財産調査で行うべき点)
・銀行・証券会社
・不動産
・貴金属や宝飾品等
・信用情報機関に開示請求
・その他郵便物・メールの確認

2.費用を確認し、用意する

自分で相続放棄を行う場合、一人につき概ね3,000円~4,000円ほどかかります。詳細あ費用を確認し、ご用意ください。

・収入印紙代:800円(一人につき)
・郵便切手:概ね400円~500円(管軸の裁判所によって異なる)
・亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本:750円
・亡くなった方の住民票除票(又は戸籍の附票):300円程度(各自治体による)
・申述する人(相続放棄を申し込む人)の戸籍謄本:450円

3.必要書類を用意する

相続放棄は、申述する方(相続放棄する方)と亡くなった方がどのような関係であるかによって、必要書類が異なります。必要に合わせて相続放棄に必要な書類を誤用ください。

すべての場合、共通して必要な書類は以下のものです。

・亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本
・亡くなった方の住民票除票(又は戸籍の附票)
・申述する人の戸籍謄本
・相続放棄申述書

4.家庭裁判所に申述する

必要書類が準備出来たら、家庭裁判所に申述します。相続放棄申述書と必要書類、連絡用の郵便切手を亡くなられた方が最後にお住まいだった住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。家庭裁判所によっては郵送で受付しているところもありますので、事前に確認されることをお勧めいたします。

相続放棄は相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に行わなければいけません。申述期間の伸長の手続きをする場合にも、相続放棄をする時と同様に後で説明する必要書類を添付しなくてはいけないため、「ひとまず放棄の期間を延ばしておこう」という場合も準備が必要となります。

5.家庭裁判所から届く照会書に返送する

相続放棄の申述手続きをおこなうと、「照会書」が送られてきます。家庭裁判所は照会書により、亡くなられたことを知った日、相続放棄をご自身の意思でおこなっているか、相続放棄をする理由等を確認し、申述を受理するかどうか判断します。

照会書の内容は「その申述が真意に基づいたものであるか」「法定単純承認がないか」などの確認がなされます。ちなみに法定単純承認とは、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合などに単純承認(プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続すること)したとみなされることをいい、相続放棄ができなくなります。

「法定単純承認がないか」については、その判断にあたっては法的な判断が必要な場合もあるため注意が必要です。法定単純承認については、基本的には故人の財産を引き出して使ったなど、遺産を処分していなければ大丈夫と思ってください。

6.相続放棄申述受理書が届く

照会書を返送し、無事に相続放棄の申述が受理されれば、家庭裁判所から「相続放棄申述受理書」が届きます。「相続放棄申述受理書」が届くと正式に相続放棄が認められたこととなり、原則として、被相続人の債務について責任を負う必要はありません。

「原則として」と書いたのは、相続放棄の申述をしても相続放棄の有効性を債権者に争われる場合があるからです。そのような場合にはすぐに専門家に相談しましょう。対外的に相続放棄が受理されたことを証明するために「相続放棄申述受理証明書」を別途手続きの上、取得されておくと安心です。
※相続放棄申述受理証明書は家庭裁判所へ申請し取得することができます。申述者本人でなくても申請は可能で、取得枚数の制限はありません。

■相続放棄手続きを自分で行う場合の注意点とリスク

自分で行う場合の注意点とリスクについて説明していきます。

1.照会書の回答の書き方がわからない

照会書の照会事項については、その時々の事案によって内容が異なり、回答内容も異なってきます。また、法的な判断が必要な場合もあります。

この場合、専門家に依頼すると事案に沿った適切な判断をしてくれます。自身で判断がつかない場合は一度相談してみるといいかもしれません。

2.不備があると裁判所から呼び出されるケースも...

相続放棄申述の書類に不備がある場合は、裁判所「直接話を聞きたい」と呼び出されるケースがあります。ただ、弁護士などの代理人がいるケースでは、そのようなことはほとんど起こりません。

3.相続放棄の期間である3か月を過ぎてしまう

相続放棄の期間については、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に申述する必要があります。この期限を過ぎてしまうと、被相続人が負債を抱えている場合はマイナス財産まで相続されることになってしまいます。

「相続に関する手続きを知らなかった」「負債があるなんて聞いてなかった」と言っても通用しません。

もし、期限内に申立が間に合わないと判断したら期限内に延長を申請しましょう。なんの手続きもせずにこの期間を過ごしてしまうと、「法廷単純承認」といって原則として以後の相続放棄はできなくなってしまいますので注意が必要です。

4.却下されると再申請が受理されにくい

相続放棄の申述を却下された場合、再申述をすることは可能です。しかし、一度却下されている以上、再度申述をした場合に相続放棄の申述が受理されるには、それ相応の理由が必要になると考えられます。

1度目の相続放棄の申述での経緯などを踏まえ、「受理が見込めるかどうか」の判断をしてもらうためにも専門家に相談してみるといいでしょう。

5.限定承認が適しているのに安易に相続放棄してしまい、損をする場合も

被相続人に債務がある場合には、相続放棄以外にも「限定相続」という手続きもあります。これは、被相続人のプラスの財産の中でマイナスの財産を相続する手続きです。この限定承認に適した事例は少ないのですが、当てはまる事例では相続人に大きなメリットがあります。

例:相続財産に2,000万円の借金と自宅の持ち分(評価として200万円分)がある。自宅を手放したくない時に、限定承認の申し立てを行い、自宅の持ち分相当の借金(200万円)は債権者に支払うことで、自宅の持ち分は相続させてもらう。

6.次順位の相続人に相続権が移りトラブルになる場合も

相続放棄をした場合、その人はその相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされることとになり、次順位の相続人がいる場合には、その人に相続権が移ります。

この場合、相続放棄をしたからと言って、「自分はもう関係ない」と次順位の方に相続放棄をしたことを伝えなかった場合、突然亡くなった方の債権者から、次順位の相続人の方に連絡が行き、対応が求められることとなります。

次順位の相続人の方からすると、突然借金の催促が届き、そこで初めて自分が相続人になったことを知ります。事前に準備をすることもできないため、そこから相続人間のトラブルが新たに生じてしまう可能性もあるので注意が必要です。

7.相続放棄して管理義務が及んでしまうトラブルも

相続放棄をしても、財産を「現に占有している」者は、相続財産の清算人に引き渡すまでの間、その財産を管理する義務を負います。

例:被相続人と暮らしていた家を相続放棄したとしても、他にこの家を相続する人がいなかった場合、その家を管理しなければいけません。管理を放置したばかりに、第三者に迷惑をかけた場合には、責任を問われる恐れがありますので注意が必要です。

■専門家に依頼するべきケース

・相続放棄の期限「三か月以内」を過ぎている場合
・財産調査が必要になる場合
・相続財産管理人の選任が必要な場合
・相続放棄の仕方がわからない・面倒くさい
・相続人同士で争いがある場合

〈費用〉
・自分で相続放棄の手続きをする場合:5,000円程度
内訳...収入印紙800円、必要書類の取得費用、その他(郵便切手や交通費など)

・司法書士に相続放棄の手続きを依頼する場合:3万円~5万円程度
主に、書類の収集や作成をサポートしてほしい場合は司法書士に依頼するのが経済的に見ていいでしょう。司法書士は書類関連の専門家であり、手続きに必要な書類の整備や提出に精通しています。

・書類の収集や作成だけサポートしてほしい
・お金をあまりかけたくないが、相続放棄を専門家に依頼したい
・土地や家を含む相続放棄をしたい
・揉めそうな相続人がいない
以上の場合は、司法書士に依頼をするのが適切なケースです。

・弁護士に相続放棄の手続きを依頼する場合:5万円~10万円程度
・相続放棄全ての手続きを全部任せたい
・相続人間・債権者と揉めていて対応してほしい
・相続問題を他にも持っている
以上の場合は、弁護士に相続放棄を依頼することで、法的な専門知識と経験を活かしてスムーズに手続きを進められます。

自身の状況に合わせて適切な専門家を選び、円滑に進めましょう。

■まとめ

これまで説明をしてきたように、相続放棄の手続きを自分で行うことも可能です。しかし、法律や相続の知識がないまま自分で進めてしまうと、書類の不備や遅延のリスクがあります。相続放棄の手続きは一度失敗してしまうと取り戻すのは難しい場合もあります。

相続放棄の申述手続きについて、ご自身でおこなうことに不安のある方、期限が過ぎてしまった等の特別な事情がある場合は、専門家に早めにご相談されることをお勧めいたします。

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