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自筆証書遺言が無効になってしまう場合を徹底解説

23.05.08
自筆証書遺言が無効になってしまう場合を徹底解説

自筆証書遺言は、手軽に遺言を作成できる方法ですが、具体的な書き方やルールを知らない方も多いのではないでしょうか。自筆証書遺言の書き方を知ることで、不備やミスを防ぐことができます。また、自筆証書遺言の作成を検討する際に、知っておかなければならないのが、自筆証書遺言の成立要件です。自筆で書いた遺言書が必ずしもすべて有効になるわけではありません。

そこで今回は、『自筆証書遺言が無効になってしまう場合』について、あおい法務事務所がご説明します。

そもそも自筆証書遺言とは、遺言を作成する人により、自筆(自書)で書かれた遺言書のことです。紙とペンさえあれば誰でも作成でき、特別な手続きなども不要なため、とても簡単な遺言の方法です。ただし書き方を誤ると効力が無効になる可能性があるため、作成時は注意しなければいけません。

■自筆証書遺言が無効になってしまう場合その1:自署でない箇所がある

自筆証書遺言は、遺言者自ら自筆で作成する必要があり、PCやワープロで作成されたものは無効となります。ただし、2019年1月の法改正によって『財産の詳細を記した目録部分については手書きではなくてもよい』とされています。パソコンで作成した財産目録や、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を目録として添付することも可能ですが、目録以外の全文、日付、氏名については手書きでなければいけません。そのため、必要箇所が手書きでない場合、自筆証書遺言は無効となってしまいます。

■自筆証書遺言が無効になってしまう場合その2:日付が記載されていない

遺言書は、「いつ書かれた」ということが非常に重要なため、日付がない遺言書は無効となります。遺言書が書かれた日付が明確でなければいけないため、「○○年○○月吉日」といった日付が明らかではない書き方も認められません。

■自筆証書遺言が無効になってしまう場合その3:署名・押印がない

遺言書には、誰が書いたのかを明らかにするため必ず「署名・押印」が必要です。署名・押印がない場合には無効となってしまいます。なお、押印は実印である必要はなく、認印やシャチハタのようなインク浸透印、拇印でも問題ないとされていいます。しかし、実印で押印し、印鑑証明書も同封しておけば「遺言書が誰によって書かれたか」を証明できるので実印が望ましいです。

■自筆証書遺言が無効になってしまう場合その4:内容が不明確

自筆証書遺言に書かれた遺言の内容が不明確な場合も無効となる可能性があります。遺言書を第三者(裁判官など)が見ても、どの財産がどれを指すのか明確に分かるように記載しなければいけません。不動産について記載する場合には、住所表記と地番では異なるため、事前に登記情報を取り寄せてください。「所在」「地番」「地目」「地積」「家屋番号」「構造」「床面積」などを正確に記入しなければ無効となる可能性があります。難しい場合は、財産目録に登記事項証明書を添付し、日付と署名・捺印するだけでも問題ありません。

■自筆証書遺言が無効になってしまう場合その5:加筆・修正の方法が適切ではない

遺言書は、一般的な文書よりも加筆や修正の方法を法律で厳格に定められいます。後々改ざんされる恐れがあることから、加筆・修正が適切にされていない場合に自筆証書遺言は無効となってしまいます。修正する場合には、修正する部分に二重線を引き、修正内容を横に記載した上で押印してください。さらに、遺言書の末尾などの空きスペースに、「○行目の〇文字を削除し、〇文字追加した」と、追記するようにしてください。

■自筆証書遺言が無効になってしまう場合その6:他人の意思が介在している可能性がある

遺言書自体に問題がない場合でも、遺言書作成時に他人の意思が介在していると疑われると、相続人に「遺言無効確認の訴え」を起こされる可能性があります。この訴えが認められた場合、自筆証書遺言書は無効になってしまいます。

まとめ

遺言書の作成方法で、一番簡単な方法が、「自筆証書遺言」です。以前までは遺言の全文を自書するという方法でしたが、現在は財産目録について、パソコンで作成しても良いこととなりました。(しかし自書していない全ページに署名押印が必要)

一番手軽ですが、ほとんどの文を自分の自筆で書く必要があり、内容が不明確、日付もあいまいではダメなど、せっかく書いたけど形式不備で無効になってしまうという危険もあります。そして相続人が開封する前に家庭裁判所の検認が必要となります。

これに対し、「公正証書遺言」というものがあります。公正証書遺言とは、遺言書を公正証書にしたもので、公証役場で作成します。公証役場にいる公証人と呼ばれる人が、法律の規定どおりに公正証書として書類を作成するので、確実に有効な遺言書を残したいときに利用されています。公証人に立ち合いをしてもらえるので形式に不備がなく後々無効になることがありません。作成した遺言書は、公証役場で保管されるため、他者に改ざんされることがありません。

また、自筆遺言証書のように家庭裁判所の検認が不要だったり、その他の書類提出が簡易になるなど、実際の相続が簡便になるメリットがあります。公正証書遺言書は、作成に費用はかかりますが、一番安心して遺言書を残せる方法です。

自筆証書遺言は簡易にできますが、無効になってしまう可能性もありますので作成の際は、気を付けてください。

自筆証書遺言のサンプル

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