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コラム

遺産分割協議と遺産協議の手順

22.06.16
遺産分割協議と遺産協議の手順

被相続人(亡くなった方)が所有していた財産は相続が発生すると一旦は相続人全員で共有状態となります。遺産分割とは、遺言書がある場合はその内容に沿って分割(相続)しますが、遺言書を残さず亡くなった場合、一旦は相続人全員の共有財産となったものを、相続人全員で話し合い、各相続人へ分配していくことです。

身内が亡くなり相続が発生したら、被相続人が持っていた財産について「誰が、何を、どのくらい相続するか」を決める事が望ましいです。しかし、財産の種類や家族関係によっては、相続人同士で争いになってしまうケースは珍しくありません。

では、遺産の分割はどのように行うべきなのでしょうか?
今回は、遺産分割協議が必要なケースや協議の手順について詳しくご説明します。

Contents
遺産分割協議とは
遺産分割協議の手順
まとめ

遺産分割協議とは

相続が発生すると、被相続人が持っていた財産は相続人全員に引き継がれることになります。しかし、相続人が複数いる場合は、相続財産について「誰が、何を、どのくらい相続財産するか」を決めることを「遺産分割協議」といいます。

遺産分割協議は、相続人全員で話し合いをして行います。協議の成立には相続人全員の合意が必要ですが、合意さえあれば法定相続分通りに分割する必要はありません。相続人が1人でも欠けると協議は無効となり、再度全員で協議をします。

分割の方法として、例えば、亡くなった父が4,000万円の預貯金と自宅を持っており、長男と次男が相続人となるケースを考えてみましょう。長男と次男が遺産分割協議をして、長男が自宅、次男が預貯金4000万円を相続することもできますし、他にも二人で預貯金を2,000万円ずつ分け、自宅を共有名義にする分割法も考えられます。

このように、遺産分割協議は相続財産を引き継ぐにあたって、非常に重要な手続きの1つです。

遺産分割協議が必要なケース

相続が発生したからといって必ずしも遺産分割協議が必要になるわけではありません。遺産分割協議が必要なのは、次の2つのケースです。

  • 被相続人に遺言書がない場合
  • 言書はあるが遺産分割協議が必要な場合

それぞれに具体的にご説明します。

ケース1:被相続人に遺言書がないケース

被相続人に遺言書がない場合は遺産分割協議を行う必要があります。被相続人の最後の意思表示である遺言書がないと、何を基準に分割すれば良いのかの判断が難しいですが、相続人一人ひとりの事情や、被相続人であればどのように分割するかを考慮しながら協議を行うと、まとまりやすくなります。

ケース2:遺言書はあるが遺産分割協議が必要なケース

遺言書がある場合でも遺産分割協議が必要なケースはたくさんあります。例えば、遺言に記載のない財産が見つかった場合は、その財産についての遺産分割協議書を行わなければなりません。また、「預貯金は全て妻に相続させるが、残りの財産は子供たちで分け合うこと」といった大まかな遺言書の場合も、具体的な分割方法について遺産分割協議を行う必要があります。

遺産分割協議の必要がない遺言書があった場合でも、相続人全員が合意をすれば、協議によって遺言と異なる遺産分割をすることができます。ただし、遺言の内容に遺産分割協議が禁止されていないことが前提です。

遺産分割協議の手順

遺産分割協議は、相続人同士の話し合いです。話し合いを成立させるためには、事前に準備をし、何の財産がどのくらいあるか調査し、話し合いをして結果をまとめる必要があります。

遺産分割協議は以下の手順で進めていきます。

手順1.相続人を確定する

まずは「誰が相続人になるのか」を確定させましょう。相続人の調査は、被相続人の戸籍謄本を収集して行います。戸籍謄本とは、本人の名前や本籍地の他にも、親子関係や結婚離婚などの情報が記載された公文書のことです。相続人の調査を行う際は、「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」が必要ですので、まずは被相続人の死亡時の本籍地にある役所で、死亡日の書かれている戸籍謄本を取得しましょう。記載内容を見て、さらに前の戸籍がある場合はその戸籍謄本を取得する、というように繰り返し、被相続人の出生まで遡っていきます。

全ての戸籍謄本が揃ったら、そこから誰が相続人になるかを判断します。
特に、被相続人が離婚・再婚・養子縁組をしていた場合は要注意です。前妻との間の子どもや養子も相続人となり得ますので、慎重に調査を進めましょう。

手順2.相続財産を確定する

相続人を確定したら、次に「どのような財産がどのくらいあるのか」を調査します。相続財産には不動産や預貯金などのプラス財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれますので注意しましょう。相続財産には、具体的に以下のものが該当します。

【プラスの財産】

  • 土地や建物の不動産
  • 不動産上の権利(借地権、借家権、抵当権など)
  • 現金や預貯金
  • 有価証券(国債、公社債、株式など)
  • 動産(車、家具家電、時計、美術品など)
  • ゴルフ会員権
  • 知的財産権(特許権、著作権など)

【マイナスの財産】

  • 借金(借入金、未払金、小切手など)
  • 未払いの税金(所得税、住民税、固定資産税など)
  • 未払いの医療費や水道光熱費
  • 保証債務、連帯債務
  • 預り金

この他にも様々なものが相続財産に該当しますので、隅々まで調査しましょう。

手順3.財産目録を作成する

相続財産が確定したら「財産目録」を作成します。財産目録とは、被相続人にどのような財産があるかを一覧にしてまとめたものです。必ず作らなければいけないものではないのですが、円滑に遺産分割協議を行う上で、他の相続人に説明するにも便利です。

手順4.遺産分割協議を行う

相続人と相続財産が確定したら、遺産分割協議を行います。遺産分割協議は、必ず相続人全員で行わなければならず、相続人が1人でも欠けていると協議が不成立となってしまいます。遠くに住んでいるなど、参加できない事情がある場合は、電話やメールなどで話し合いに参加することも可能です。

また、相続人の中に未成年者や行方不明者がいる場合も、協議が不成立となってしまいます。代理人を立てるなどの所定の手続きを行ってから協議を進めます。

遺産分割協議では、遺産の分割方法について話し合います。必ずしも法定相続分で分割する必要はありませんが、誰か1人でも不公平に感じてしまうと話し合いがまとまりません。特に、特定の相続人に生前贈与があった場合や、生前に被相続人の介護を行っていた相続人がいる場合などは、それらを考慮して柔軟に対応していくことが大事です。

手順5.遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議は、相続人全員が合意をして初めて成立します。全員が分割内容に納得し合意を得られたら、その証拠に「遺産分割協議書」を作成します。協議書には、「誰が、何を、どのくらい相続するか」などの情報を記載し、その後、相続人全員が署名押印を行います。

不動産や預貯金の名義変更をする際、添付書類として遺産分割協議書の提出が求められるので、必ず作成しておきましょう。遺産分割協議書は、1枚の用紙に全員が署名捺印して作成されるのが一般的ですが、遠方に住んでいるなどの理由で1通に全員が署名捺印できない場合には、全く同じ内容の遺産分割協議書を作成し、それぞれに署名捺印して作成することも可能です。

まとめ

今回は、遺産分割協議が必要なケースや協議の手順について説明しました。
遺産分割協議とは、亡くなった方の財産について「誰が、何を、どのくらい相続するのか」を相続人全員で話し合って決めることです。身内での話し合いだからすぐに終わるだろうと思われがちですが、いきなり知らない相続人が出てきたり、相続人同士で意見が異なったりするとなかなか話し合いがまとまらず、最終的には争いに発展してしまうこともあります。

家族が争わず円満に相続を終えるために、元気なうちに自分の財産について最終の意思である「遺言書」を残しておくことが望ましいです。

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